「はあちゅう」のセクハラ被害告白 情弱を鴨にして稼ぐインフルエンサーが、WEBメディアを使って制裁を加えることは正義か?

 

「炎上」ビジネスの是非を問う

 

「はあちゅう」こと伊藤春香氏が電通時代のセクハラ被害&パワハラ被害を訴えた記事が盛り上がっている(→はあちゅうが著名クリエイターのセクハラとパワハラを証言 岸氏「謝罪します」 )。

 

全面的に加害者側に責任があり、彼女の訴えはセクハラ被害を許さないという、当たり前の正義を世間に問う素晴らしいメッセージになると思う。本記事ではあちゅう氏が訴えていることに異論はないし、会社内での強い立場を利用してセクハラやパワハラをすることが許されざる行為であり、セクハラの加害者には責任を取らせて罰を与えるべきという思いを支持したい。

 

ただ、はあちゅう氏のこれまでの活動やビジネスを詳しく知る一人として、「はあちゅう」ブランド認知とビジネス活用のためなら、手段を問わずなんだってやるという姿勢に恐ろしさを感じる。繰り返し述べるが、今回はあちゅう氏が訴えているセクハラ被害やパワハラ被害は断じて許されるものではないし、罪には罰が与えられるべきだろう。ただ、本件のセクハラ被害告白は、私的リンチの側面があることを考察して綴ることとしたい。

 

 

非常に残念なことに、日本ではセクハラやパワハラはまっとうな手段で訴えることが難しいことが現実としてある。会社内でセクハラ被害を訴えるのにどれだけの勇気と覚悟が必要であるか。また、セクハラ被害を訴えたところで、被った被害に対する慰謝料が、被害や苦痛の分だけ取れるか? といえば、その確率はひどく低いものであるだろう。

 

セクハラを訴えることで、逆に会社内での立場が悪くなり、勤務し続けられなくなる事態も大いに想定されるし、転職時にも不利に働く可能性が高い。つまり、被害者が泣き寝入りするケースが多々あり、社会がそれを大して疑問視していないのも大いに問題である。被害者の傷に塩をすり込み、加害者はのうのうと生きられるなんて吐き気がする。

 

それでも、昔の恨みや不満に火をつけて炎上させるアプローチはいかがなものかと思う。今回のセクハラ被害の訴えは「BuzzFeed Japan」記者が、はあちゅ氏の証言を元に取材&執筆する形で加害者を断罪する形だ。アメリカでセクハラ告発スキャンダルが連鎖的に続発しており、その流れを受けて賛同して声をあげたのだろう。

 

この影響力のあるメディアに直接訴えかけるという手段を「賢く効果的な方法」とヨイショすることに恐ろしさを感じずにはいられない。正攻法は「違法なセクハラ行為によって精神的な苦痛をこうむったから、加害者に対して損害賠償を請求する」ことだろう。民法709条の不法行為で訴えれば良い。しかし、今回はあちゅう氏は民事訴訟を起こすでもなく、BuzzFeedというWEBメディアに直接訴えた。セクハラ被害を立証することは困難であり大変な労力を伴うし、民事上の責任を追及する際の不法行為の時効は3年だから、時効が成立してしまっている。

 

もしくは、刑事訴訟として、強制わいせつ罪(時効7年)で訴えたり、会社を相手に「安全配慮義務違反(債務不履行 時効10年)という手段を取るという選択肢もある。しかし、はあちゅう氏が採った手段は、WEBメディアによる取材記事により、加害者を私的に罰するというアプローチである。つまり、法律による裁きではなく、メディアを活用した社会的な制裁と断罪を仕掛けた形である。

 

「BuzzFeed Japan」は正義の味方のつもりなのかもしれない。だが、これは知名度や影響力の持つ人間にしか選ぶことができない手段であり、私的なリンチが正義の行為として肯定されたり称えられたりすることに疑義を呈したい。被害者が加害者を訴えるのに、正当な手段では断罪できないから、WEBメディアという媒体を使っただけで何が悪い? と反論されるかもしれない。でも今回のセクハラ被害の訴えは、BuzzFeedと はあちゅう氏 の両方に大きなメリットがあり、安全地帯から制裁を下す卑怯な行為ではないだろうか?

 

別に「撃っていいのは撃たれる覚悟のある人間だけだ」ということを主張したいのではない。被害者と加害者の関係から、弱者である被害者は持てる武器を駆使しても戦えないなんてケースも数えきれないほどある。だからイレギュラーな方法だって使わざるを得ないという意見もわからないでもない。

 

だがしかし、今回のはあちゅう氏のWEBメディア活用によるかつてのセクハラ被害の断罪は、強者による制裁の側面が強いことも意識するべきではないだろうか? もちろんはあちゅう氏は被害者だ。それでも、現在はインフルエンサーとして相当な知名度と影響力を持っている。BuzzFeedもWEBメディアとして同様に強者側だ。訴えられた元電通社員は加害者かもしれないが、現在の力関係では弱者に当たる。

 

 

そもそも問題として、セクハラを黙殺するような社会と企業が腐っているのだけれども、だからといって私的な制裁を許容することを認めることは違うのではないかと声を大にして言いたい。有名人やメディアの活用に長けた人が、過去の被害を声高に叫び、相手に大きなダメージを与えることが許されしまう。被害者は加害者に何をしても良いのか? という点と、本当にその被害は事実か? という点も問題になってくるだろう。

 

「はあちゅう」氏はメディアを活用することが天才的に上手い。今回の記事もしっかりと自分のブランドを守り、その価値が少しも傷つくことのないように記事を発信している。謝罪会見すら炎上させて企業価値を損なう無能な日本の企業経営者は、彼女の戦略を大いに参考にすべきだろう。

 

はあちゅう氏が絶妙に上手いのは、セクハラのようなパワハラ被害を全面に押し出していることである。自宅に呼び出されて人格を否定されるような酷い言葉を度々言われたという。でも、身体の関係を強要されたとかを訴えているわけではない。つまり遠回しに私は「ヤッてない」と主張しているのである。

 

加害者の酷い科白や人間性を擁護するつもりは微塵もないが、はあちゅう氏は(彼女の意見では)その屑みたな男性に、性の対象(捌け口)として利用されかねないとわかっていて、友人を紹介したという。自分が損したり被害に合わないために、生贄を差し出したのだ。それも、その生贄は友人であったのだ。自分の利益のために友だちを生贄とした。こんな生贄ネタまで晒して、私は可愛くないから(自虐ネタを披露し)性被害には合わなかった(ヤッてない)ことを全力で主張しているのである。


別にやったかやらなかったからなんて、第三者からしたらどうでも良いし、月に1〜2回の頻度で男の自宅に一人でいって何もしてないのか? という下衆な勘繰りをするつもりもない。それでも彼女が狡猾なのは、訴えられた男が自ら性交渉を強要したなどと、不利になるコメントをするはずもないだろうことをわかっていることだ。ギブ&テイクのセ○レの関係であったとしても、それを訴えかけられた男側から立証することはさらに困難だろう。

 

今回のセクハラ被害の記事で、BuzzFeedはアクセスと広告収入を稼ぎ、はあちゅう氏は旧態依然の男性企業社会と戦う女性として、セクハラ被害に泣き寝入りをする女性の味方として、自身の知名度とブランディング向上に成功するだろう。ただ思い出して欲しい。高橋まつりさんの事件では、被害者側に訴える個人的な利益がなかったこと、伊藤詩織さんの訴えでは法律という正当な手段を踏み、女性としてのこれからの人生を懸けるようなリスクをさらして訴えたことを。

 

本件ははあちゅう氏の訴えに本人の多大な利益が見え隠れすることくらいは意識しておいた方が良いだろう。そして、東大出身の電通勤務の綺麗な女性の自殺はニュースになるが、非正規のおっさんが何十人自殺してもニュースバリューは欠片もないと判断されることは忘れないでいたい。

 

友だちでさえ自分のために利用して、その友だちが酷い目や不幸になることなんて大したことではなさそうな彼女にとって、彼女の顧客や情報弱者の支援者が期待する利益を得られなかろうが、彼女を信じて損をしようが知ったこっちゃないだろう。使えるものは使う。友だちを生贄として平気で晒す人間が、ホイホイ釣れる情報弱者を大切にするか? 友だちすら裏切る人間が関係の薄い無知な人間に利益を分けてあげるだろうか? はあちゅう氏は炎上マーケティングの天才であるが、それに便乗するクライアントはモラルを疑うし、ホイホイ信じる情弱は、人をすぐに信じる前に頭を少しぐらい働かせた方が良いだろう。

 

話が逸れた。被害者が加害者を訴えるのに正攻法以外の手段に頼らざるをえないという意見は否定しないが、はあちゅう氏が暴力の被害者として今度は暴力を再生産していることに異を唱えたい(虐待をされた経験が虐待を生むみたいな悪循環)。そして、私的なリンチが認められる社会は生きづらく嫌な世界ではないかということ、不貞行為や不法行為はいまの時代露呈することは覚悟した方が良い(元一休CTO(もとはてなCTO)の件…など)ということを最後にお伝えして締めたいと思う。